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動物を消耗品にしないために… 500種以上の動物と向き合ってきた私たちの答え

動物を消耗品にしないために… 500種以上の動物と向き合ってきた私たちの答え

目次

  • 私たちは動物保護団体ではありません
  • 保護活動を始めようと思って始めたわけではありません
  • 動物業界の中で見てきたもの
  • 500種という数字の意味
  • 傷病野生動物の相談は今も続いています
  • 行き場を失うのは野生動物だけではありません
  • なぜ総合ペットフードバンクを始めたのか
  • 理想だけでは続かない
  • 「自然の摂理」という言葉に悩むことがあります
  • 私たちが本当に守りたいもの

私たちは動物保護団体ではありません

私たちは動物保護団体ではありません。

本業は動物プロダクションです。

映画やテレビ、CM、イベント、教育展示などに携わりながら、これまでに哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・昆虫類など500種以上の動物たちと向き合ってきました。

サラブレッドやエミューといった大型動物から、コアリクイ、ナマケモノ、コツメカワウソ、ビントロングなどの珍しい動物たちまで、その種類は多岐にわたります。

この話をすると、

「だから動物保護もされているのですね」

と言われることがあります。

もちろん、生き物は好きです。

だからこの仕事を続けています。

しかし、私たちが傷病野生動物を受け入れたり、行き場を失ったペットたちの相談を受けたり、ペットフードバンクを運営したりしている理由は、単純な動物好きという言葉だけでは説明できないところまで来てしまいました。

むしろ今は、

「どうしてこうなったのだろう」

と思うことの方が多いかもしれません。


保護活動を始めようと思って始めたわけではありません

傷病野生動物の保護を始めようと思って始めたわけではありません。

行き場を失ったペットの受け入れを事業にしようと思ったわけでもありません。

ペットフードバンクを立ち上げようと計画していたわけでもありません。

気が付けば、そうせざるを得ない場面に何度も出会ってきました。

誰かが困っている。

でも受け入れ先がない。

相談先がない。

引き取り手がいない。

そんな話が少しずつ積み重なっていった結果が今の姿です。

最初は一件だったかもしれません。

それが二件になり、

三件になり、

気が付けば現在の活動になっていました。

私たちが目指して作ったというよりも、目の前の現実と向き合い続けた結果なのだと思います。


動物業界の中で見てきたもの

私は長年、動物業界に身を置いてきました。

動物プロダクションという仕事を通じて、多くの動物たちと出会ってきました。

その中で強く感じるようになったことがあります。

動物は思っている以上に簡単に消耗品として扱われることがあるということです。

もちろん、すべての現場ではありません。

動物を大切に扱う人もいます。

命と真剣に向き合う人もいます。

しかしその一方で、

撮影のため。

展示のため。

販売のため。

人間の都合によって求められ、

不要になれば手放される。

そんな現実も確かに存在します。

私はその光景を何度も見てきました。

だからこそ思うのです。

動物に負担をかけなくても人の心は動かせる。

リアルな動物を消耗品として扱わなくても感動は生み出せる。

動物を使う仕事だからこそ、その命に最後まで責任を持つことはできるはずだと。

傷病野生動物の保護活動も、行き場を失ったペットたちの受け入れも、その延長線上にあります。


500種という数字の意味

時々、

「500種も飼育してきたのですか」

と驚かれます。

確かに数字だけを見ると大きく見えるかもしれません。

しかし私たちにとって重要なのは数字ではありません。

サラブレッドとハツカネズミでは必要な環境が違います。

エミューとフクロウでは管理方法が違います。

コアリクイとコツメカワウソでは食事が違います。

ナマケモノとビントロングでは生活リズムも違います。

爬虫類には爬虫類の管理があります。

両生類には両生類の管理があります。

昆虫には昆虫の管理があります。

500種という数字は、500通り以上の命と向き合ってきた時間でもあります。

そして、その経験が今の活動の土台になっています。


傷病野生動物の相談は今も続いています

私たちのもとには、平時でも週に2〜3件ほどの野生動物に関する相談が寄せられています。

ロードキル。

釣り糸やテグスに絡まった野鳥。

衰弱した幼獣。

繁殖期や巣立ちの時期になると、その件数は3倍から5倍になることも珍しくありません。

私たちがこうした話を書くと、どこか特別な活動のように感じられるかもしれません。

しかし現場では、今も日常の出来事として続いています。

この記事を書いている前日にも、テグスに絡まったムクドリの相談がありました。

幸い大きな外傷はありませんでしたが、絡まり方によっては脚の壊死や骨折、衰弱につながることもあります。

ロードキルもそうです。

テグスもそうです。

野生動物の問題というより、人間社会との接点で起きている事故と言った方が正しいのかもしれません。

だから私たちは、その一件一件と向き合い続けています。

ただし、私たちはすべての依頼を受けられるわけではありません。

特に他府県からの救助要請については原則としてお断りしています。

助けたくないからではありません。

助けたいからこそです。

野生動物は本来、野生へ帰すことが目的だからです。

県をまたいだ移送は、その後の野生復帰や法的な取り扱いにも大きく影響します。

だから私たちは全国からの相談には応じていますが、「迎えに来てほしい」という依頼については慎重な判断を行っています。

行き場を失うのは野生動物だけではありません

実は私たちのもとへ寄せられる相談で最も多いのは、傷病野生動物ではありません。

様々な理由によって飼えなくなったペットたちの相談です。

平均すると毎日2〜3件。

年間では700件から1000件近い相談になります。

犬や猫だけではありません。

鳥類。

小動物。

爬虫類。

両生類。

時には大型動物や特殊な動物の相談が寄せられることもあります。

理由も様々です。

引越し。

結婚。

出産。

転勤。

高齢化。

入院。

介護施設への入所。

そして飼い主の急死。

もちろん、中には安易な飼育放棄と思わざるを得ないケースもあります。

しかし現場で話を聞いていると、それだけでは語れない事情も見えてきます。

本当は最後まで飼いたかった。

手放したくなかった。

それでも、どうにもならなかった。

そんな相談も少なくありません。

今日も。

明日も。

誰かから電話がかかってきます。

「もう飼えないんです」

その一言の背景には、それぞれの事情と、それぞれの葛藤があります。

電話口で言葉が続かなくなる人もいます。

何度も謝る人もいます。

こちらが質問しても、しばらく沈黙が続くこともあります。

長年一緒に暮らしてきた動物を手放すということは、そう簡単な決断ではないのでしょう。

もちろん、すべてを受け入れられるわけではありません。

施設にも限界があります。

人手にも限界があります。

本当は助けたい。

引き受けたい。

そう思いながらお断りしなければならないこともあります。

それは今でも慣れません。

判断としては間違っていないはずなのに、電話を切ったあとも考えてしまうことがあります。

なぜ総合ペットフードバンクを始めたのか

行き場を失った動物たちを受け入れていると、必ず直面する問題があります。

それが飼育費です。

動物たちは一日だけ生きるわけではありません。

傷病野生動物も。

飼育放棄されたペットも。

高齢や障害によって行き場を失った動物たちも。

毎日ご飯を食べます。

そして、その多くは数週間ではなく、数ヶ月、時には何年にもわたって飼育が続きます。

私たちは現在、多種多様な動物たちを終生飼育しています。

その維持には膨大なフードや飼育用品が必要になります。

一方で世の中には、様々な理由で行き場を失うペットフードや飼育用品があります。

パッケージ変更。

過剰在庫。

販売終了。

そうした理由によるものもあります。

しかし、私たちの元へ届く物資の中で印象に残るのは、別の理由によって行き場を失った品々です。

長年家族として暮らしてきた動物との別れ。

そのあとに残された物たちです。

介護のために用意された流動食や介護食。

少しでも元気になってほしいと願って集められたサプリメント。

歩行補助ハーネス。

介護マット。

保温用品。

床ずれ防止用品。

亡くなる直前まで使われていたフード。

私たちの元へ届く支援物資の箱を開けると、そのご家庭の時間が見えることがあります。

介護食が何箱も入っている。

開封済みの流動食がある。

何種類ものサプリメントが入っている。

きっと最後まで諦めなかったのだろうと思います。

もっと食べてほしかった。

もう少し歩いてほしかった。

元気になってほしかった。

そんな願いが見えることがあります。

時には、ほとんど手を付けられていない介護食が何箱も送られてくることもあります。

おそらく用意した直後に旅立ってしまったのでしょう。

箱の中を見ながら、その子のことを知らない私たちですら胸が詰まることがあります。

それらは不要になった物ではありません。

その子を大切に想っていた時間の名残です。

私たちの元へ届く支援物資の多くは、単なるフードや飼育用品ではなく、その動物と家族が共に過ごした時間そのものでもあります。

だからこそ私たちは、それらを単なる余剰品として扱いたくありません。

次に必要としている動物たちへつなぐ命のバトンとして活用したい。

そう考えて立ち上げたのが総合ペットフードバンクです。

現在は主に自社施設内で飼育している動物たちのために活用しています。

一部は保護団体や預かりボランティアへの分配も行っていますが、現時点ではまだ、自社で抱える動物たちだけでも十分に消費される量です。

それでも少しずつ支援物資は増えています。

捨てられるはずだったフードや飼育用品が、別の命を支える。

私たちは、その循環を大切にしたいと考えています。

理想だけでは続かない

動物福祉という言葉があります。

とても大切な考え方だと思います。

しかし現場にいると、理想だけでは続かないことも痛感します。

命を助けるためには餌が必要です。

設備が必要です。

医療が必要です。

そして、それらを維持するためのお金も必要です。

どれだけ綺麗な理念を掲げても、明日の餌代が払えなければ活動は終わります。

どれだけ助けたいと思っても、施設が維持できなければ受け入れはできません。

現在、私たちは約180坪の施設内で、多種多様な動物たちを飼育管理しています。

その維持には、施設の賃料をはじめ、電気代や水道代などの光熱費、フード代、飼育用品代、設備維持費、医療費など、様々な費用が発生します。

特に終生飼育を行っている動物や、高齢個体、障害を抱えた動物たちについては、継続的な医療や特別な管理が必要になることも少なくありません。

そうした費用を積み重ねると、施設全体の維持管理費は月額換算でおよそ120万円前後になります。

もちろん、これは大規模な設備投資や改修工事などを含まない、日常的な維持管理に必要な費用です。

命を守るということは、助けた瞬間で終わる話ではありません。

その後の何年にも及ぶ飼育管理まで含めて初めて成立するものだと、私たちは考えています。

だから私たちは本業を大切にしています。

動物プロダクションという仕事。

動物関連商品の販売。

オリジナルグッズの企画販売。

各種サービス。

一見すると保護活動とは関係ないように見えるかもしれません。

しかし私たちにとっては違います。

それらは全て、行き場を失った動物たちを支えるための土台です。

近年はAmazonほしい物リストなどを通じてご支援をいただける機会も増え、本当に助けられています。

それでも活動の大半は、今も変わらず自己資金によって支えられています。

時々、

「どうしてそこまでやるのですか?」

と聞かれることがあります。

正直に言えば、経営だけを考えるならもっと効率の良い方法はいくらでもあります。

傷病野生動物の保護も。

終生飼育も。

フードバンクも。

利益を生む事業ではありません。

むしろ負担の方が大きい。

それでも続けているのは、私たちが目指しているものが単なる動物ビジネスではないからです。


「自然の摂理」という言葉に悩むことがあります

SNSなどでは、

「自然界では弱い個体は淘汰される」

「助ける必要はない」

という意見を目にすることがあります。

自然界に淘汰があることは事実です。

私たちもそれを否定するつもりはありません。

ただ、その言葉に戸惑うことがあります。

ロードキルは自然でしょうか。

釣り糸に絡まることは自然でしょうか。

テグスや人工物による事故は自然の摂理なのでしょうか。

もちろん答えは簡単ではありません。

私たち自身も今なお考え続けています。

現場に立つたびに悩みます。

助けるべきか。

見守るべきか。

介入するべきか。

しないべきか。

答えのない問題に向き合うことも少なくありません。

だからこそ、私たちは声の大きな意見だけで判断したくありません。

目の前にいるその個体を見て判断したい。

現場を見て判断したい。

そう考えています。


私たちが本当に守りたいもの

私たちは動物だけを守りたいわけではありません。

動物を大切にしたいと思う人の気持ち。

自然環境を残したいと思う人の気持ち。

命と向き合う責任を忘れたくないという想い。

そうした価値観そのものを守りたいのです。

動物を消耗品として扱わない。

利益だけで命を判断しない。

動物に関わる仕事だからこそ、最後まで責任を持つ。

それが私たちの考え方です。

500種を超える動物たちと向き合ってきました。

それでも、分からないことばかりです。

ただ一つ分かっていることがあります。

命は数字ではないということです。

傷病野生動物。

行き場を失ったペット。

終生飼育を続ける動物たち。

そして、その動物たちを支えようとしてくださる方々。

私たちの活動は、多くの人たちの想いによって成り立っています。

今も時々思います。

どうしてここまで抱えることになったのだろうと。

もっと合理的なやり方はいくらでもあったはずです。

もっと楽な選択肢もあったはずです。

それでも、目の前にいた命を見過ごすことができなかった。

たぶん、それだけなのだと思います。

まだ道半ばです。

それでも私たちは、動物に負担をかけなくても人の心を動かせることを証明したい。

動物を消耗品として扱わなくても事業が成り立つことを証明したい。

そして、動物に関わる仕事は、命を最後まで見つめる仕事であっても良いのだということを証明したい。

だから私たちは今日も、本業を続けながら、行き場を失った命たちと向き合っています。

                 

 

                                                                    動物プロ・有限会社サイエンスファクトリー  代表 奥平 耕一郎