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冬を越えられない野良猫はなぜ毎年出るのか|数えられない命と“見えなくなる構造”

冬を越えられない野良猫はなぜ毎年出るのか|数えられない命と“見えなくなる構造”

見えないのは、いなくなったからではない。
最初から“記録されない命”として存在しているから。

冬を越えられない野良猫が、毎年「見えなくなる理由」

※本稿は、野外で暮らす猫の生存や繁殖について、
現場観察と既存研究の両方を踏まえた視点から書いています。
特定の施策や立場を支持・否定するものではありません。


冬を越えられない野良猫は、
毎年、確実にいます。

これは感想ではなく、
多くの地域で繰り返し観察されている事実です。

ただし、その数を
正確に答えられる人はいません。

なぜなら、
野良猫は制度上
**「数として管理・記録されない存在」**だからです。


記録されない命という前提

野外で生まれた猫は、

  • 個体識別されない

  • 死亡が報告されない

  • 消失と死亡の区別がつかない

という条件下にあります。

そのため、
生存率や死亡率は
推定値として扱われることがほとんどです。

私たちが目にしている数字は、
実数ではなく
構造の傾向を示す指標に近いものだと
理解する必要があります。


生まれる瞬間と、消える過程の非対称性

現場で観察していると、
ある傾向が繰り返し現れます。

  • 生まれる瞬間は目に入りやすい

  • 消える過程は、ほとんど目に入らない

これは猫の生態というより、
人間の認知の特性に近い現象です。

小さく動き、鳴く存在は
注意を引きますが、
衰弱や消失は
日常の中に溶け込みやすい。


冬は「原因」ではなく「表出期」

専門的な現場では、
冬はしばしば
**“死亡が集中する季節”**として扱われます。

ただしそれは、
冬が突然命を奪うからではありません。

  • 栄養不足

  • 慢性的な感染

  • 繰り返される出産と授乳

  • 軽度の外傷の蓄積

これらが
一定期間、解消されないまま重なり
限界を迎える時期が
冬に来やすい、というだけです。


母猫の消失が示すもの

野外で暮らす母猫は、
繁殖期ごとに
身体資源を大きく消耗します。

この負担は
短期的には見えにくく、
翌年、あるいは数年後に
「姿を消す」という形で表面化します。

ここでも起きているのは、
突然の出来事ではなく
累積の結果です。

「増えているように見える」理由

多くの地域で、

  • 猫が減っている実感はない

  • むしろ増えているように見える

という声が上がります。

しかしこれは、
出生と消失のタイミングが
視覚的に一致しないために起きる
認知上の錯覚である場合が少なくありません。


問われているのは「構造」

この文章は、
猫を評価するためのものではありません。

また、
誰かの行動を
正しい・間違っていると
裁くためのものでもありません。

問いかけているのは、
なぜ同じ現象が
毎年ほとんど変わらず繰り返されるのか

という構造そのものです。


冬は、毎年来る

冬は例外ではありません。

毎年、必ず来ます。

だからこそ、
「そのたびに起きていること」を
一度、感情や立場から切り離し、
構造として眺めてみる余地がある。

本稿は、
そのための視点整理として
書かれています。


補足

地域や環境、個体差によって
状況は大きく異なります。
本稿は、
特定の現場を一般化する意図はありません。