動物の一生を、人間の時間の流れに重ねたとき、
見えてくるものがある。

それは、
時間の長さではなく、
時間がどれほど真剣に使われていたか という事実だ。

人は時間をたくさん持っている。
だから、
「また今度」「そのうち」「明日でいい」と
多くのことを後回しにできてしまう。

けれど、
彼らはそう生きていない。

眠る時間も、
遊ぶ時間も、
寄り添う時間も、
すべてが迷いなく選ばれている。

そこには、
効率も計画もなく、
ただ
「今、この瞬間をどう使うか」
という問いだけがある。

人の時間で測れば、
ほんの一瞬にすぎない出来事。
けれど、
その一瞬は確かに、
彼らの一生の一部だった。

いなくなったあとで、
そのことを思い知らされる。

何でもないと思っていた日々が、
どれほど濃く、
どれほど一方通行ではない時間だったのか。

彼らは、
自分の短い一生を、
人の長い人生の中に
そっと置いていく。

気づくのが遅れても、
その時間は消えない。

なぜなら、
彼らと過ごした時間は、
思い出として閉じ込められるものではなく、
人の生き方そのものに静かに染み込んでいくもの だから。

…動物の一生を
人間の時間に重ねたとき、
私たちはようやく、
「大切にしていたつもりの時間」の
本当の意味に触れる。