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GSA-JAPAN公式目安箱に寄せられた質問から学ぶ Vol.3

GSA-JAPAN公式目安箱に寄せられた質問から学ぶ Vol.3

その“かわいい”の裏側に、法律と責任はありますか?

【質問】

YouTubeやInstagramなどのSNS課金システムを使って、動物の動画や画像で収益化することに法的な問題はあるのでしょうか?
以前、SNSで「これは違法ではないか」と指摘する投稿を見かけ、気になっています。

また、動物をキャラクター化してグッズ販売やイベントをしている人も多くいますが、どこまでが許される範囲なのか
もし法律に違反しているなら、なぜ取り締まりが行われないのかも含めて、詳しく知りたいです。


【結論】

「動物の動画や画像を収益化する行為そのもの」は違法ではありません。
ただし――
使用される動物の“出所・管理方法・使用頻度・営利性”によっては、法的責任が発生するケースがあります。

つまり、どんな動物をどう使うかによって、合法にも違法にもなり得るということです。


✅ 一般の方向けにわかりやすく整理すると…

■【OK】とされるケース(適正・合法)

  • 飼い主が自身のペットを撮影してSNSに投稿し、広告収益を得る

  • 飼育環境や健康に配慮し、動物のストレスや危険がない状態で撮影されている

  • 動物が苦しんでいない、危険にさらされていない、見世物になっていない

  • 種類や場所に関して、特別な許可が不要な動物(例:犬猫などの一般家庭動物)

■【NGまたはグレー】になる可能性があるケース

  • 動物を「反復・継続的に営利目的で使用」しているにもかかわらず、「第一種動物取扱業」の登録がない

  • 外来生物や保護種(例:ミドリガメ、アライグマなど)を許可なく飼育・展示している

  • 動物の明らかなストレス行動・虐待・過度な演出をコンテンツにしている

  • 動物への配慮が不十分な状態でのイベント出演、コラボカフェ、タレント展開など


法律で問題になる主なポイント

法律該当する内容違反した場合
動物愛護管理法動物の“営利使用”には登録義務あり(例:展示、貸出、撮影等)無登録で活動すると懲役または罰金の対象に
外来生物法外来種の飼育・展示には許可が必要無許可使用は3年以下の懲役または300万円以下の罰金
種の保存法・文化財保護法保護種・希少種・天然記念物の取り扱いに制限許可なしは行政処分・罰則の対象

なぜ違法っぽく見えても取り締まりされないの?

  • 実態の把握が難しい(自宅で撮影、私物の動物使用など)

  • 見た目には“可愛く映っている”ため、明確な虐待や違法性が判断しにくい

  • 行政もリソースが限られ、通報ベースでしか対応できないケースが多い

  • ただし、SNSやメディアを通じて問題が拡散すると、突然行政指導や炎上が起きる例は増えています


配信者・事業者側が守るべき「3つの配慮ポイント」

① 動物の「撮影や出演」が反復的・収益目的なら、取扱業登録が必要

→「うちの猫を毎週動画に出してます」「動物イベントを月に何度も開催」なら、登録を検討すべき状況です。

② 動物の体調や感情にも“視聴者の目”が届いている

→ 「ちょっと可哀想…」と感じるだけで、フォロワー離れや通報対象に。
可愛い=好かれる時代から、可哀想=嫌われる時代へ変わりつつあります。

③ 動物は“演出の道具”ではなく“命”であることを忘れない

→ キャラクター化や商品化も、命への敬意や保護活動とのバランスを意識することが求められています。


収益よりも、信頼を残すコンテンツを

YouTubeのスーパーチャット、Instagramのギフティング、グッズ販売――
動物の姿を通して収益を得ることは、今や多くの人に支持されるライフスタイルやビジネスの一形態になっています。

しかし、その一方で、
動物を使う責任、守る義務、そして「命を預かる覚悟」が問われる時代でもあります。

収益は「一時の成功」でも、信頼は「長く続く価値」です。

「かわいい」だけでなく、
その子の命に、きちんと向き合っているか――
その姿勢こそが、真に支持されるクリエイター・施設・ブランドになるための道です。

【質問】

我が家で飼っている犬を、ある動物プロダクションにペットタレントとして登録しました。
先日、ドラマの撮影が決まり、無事に撮影を終えて、出演料と交通費もいただきました。

ところが、SNSなどで「一般家庭で飼われているペットを登録して貸し出すのは違法だ」という意見を見かけ、少し不安になりました。
私自身は動物取扱業などの登録はしていませんが、このような仕組みで出演させるのは法律的に問題ないのでしょうか?


【結論:使用の方法とプロダクション側の体制によって合法か違法かが分かれます】

あなたのように、家庭で飼っている動物をペットタレントとして登録し、動物プロダクションを通じて撮影に参加すること自体は違法ではありません。

ただし、それが適正に運営されている「登録済の動物取扱業者(第一種動物取扱業)」による斡旋であることが条件です。

つまり――
プロダクション側が法律に基づいて登録し、適切な管理体制を持っていれば合法です。
無登録で動物を撮影に“貸し出している”状態であれば違法となります。


✅ 一般の方にもわかりやすく言うと…

  • 飼い主が個人で勝手に犬を貸し出して報酬を得る → 原則NG(動物取扱業の登録が必要)

  • 飼い主が登録されたプロダクションのタレント犬として出演する → OK(プロダクション側に登録義務と管理責任あり)

▶ あなたが直接タレント活動を業として行っているわけではなく、正式なプロダクションの下で契約・撮影が行われていれば違法ではありません。


動物プロダクション側に求められる法的・倫理的責任

動物プロダクションが家庭のペットをタレントとして扱うには、以下の義務があります:

①【法的登録】

  • 第一種動物取扱業(展示・貸出・訓練等)として自治体に登録されていること

②【管理体制】

  • 出演スケジュール、拘束時間、体調管理、緊急時対応などの動物福祉に配慮した体制整備

  • タレントとして登録された動物のプロフィール管理、適性確認、撮影前後の状態チェック

③【説明責任とリスクマネジメント】

  • 飼い主へのリスク説明、同意書の整備、出演現場のガイドライン共有

  • 制作会社への法令順守に基づく説明とマッチング責任


テレビ局・制作会社の法務・コンプライアンス部門向け視点

プロダクションを通じて動物タレントを使用する場合、「登録されているか?」「適正な管理体制があるか?」の確認が不可欠です。
もし未登録の団体やフリー個人から動物を起用し、現場でトラブルや事故が起これば――

  • 動物愛護管理法違反(無登録貸出)への加担

  • 制作会社の管理責任が問われる

  • 番組・ブランドの社会的信用が傷つく

こうしたリスクを避けるためにも、動物を使用する際は登録業者との契約か、登録確認済の個体であることが前提になります。


✅ 命を預かる以上、「登録と責任」は最低限のルールです

今や、動物は「可愛い演出」や「リアルな映像効果」の枠を超え、
その命への配慮や扱い方が、作品や企業の信頼を左右する時代になりました。

ペットタレントの仕組みそのものは、飼い主と社会の架け橋になる素晴らしい仕組みです。
ただし、それが法の下で適切に運用され、動物の命が守られていることが大前提です。

「登録されているか」「動物が無理をしていないか」――この2点を軸に、使う側も預ける側も、責任ある選択を。

【質問】

犬の訓練所に勤務しています。
当訓練所では家庭犬の訓練を中心に、しつけ教室やお散歩代行も行っています。
現在、動物取扱業としては「訓練」と「保管」で登録しています。

気になっているのは、当訓練所経由で行っている以下の活動についてです:

  • 老人ホームや病院へのドッグセラピー慰問

  • 訓練犬たちのイベント参加(ふれあい・PR等)

  • セラピー犬の外部団体への「貸し出し」

いずれもボランティアではなく、謝礼や依頼料が発生していると聞いています
このような活動に法的な問題がないのか不安になり、ご相談させていただきました。


【結論】

現在の「訓練」「保管」の登録のみで、“有償での慰問活動やイベント貸出”を行うことは、動物愛護管理法上の「違法行為」に該当する可能性があります。


一般の方向けにわかりやすく言うと…

日本では、動物を有償で「貸し出す」「展示する」などの事業を行うには、自治体に「第一種動物取扱業」の登録が必要です。
登録区分には、たとえば以下のようなものがあります:

  • 「貸出業」:動物を他者の元へ一時的に預け、利用させる行為(例:セラピー活動、出演等)

  • 「展示業」:不特定多数の人に見せる、触れさせる等の行為(例:イベント参加・ふれあい活動)

あなたの訓練所が現状で「訓練」と「保管」のみで登録している場合、
有償での慰問や貸出・展示行為は「登録外の営業行為」となり、動物愛護法違反の可能性があるのです。


法律上、何が問題になるのか?

動物愛護管理法 第10条(第一種動物取扱業の登録義務)

営利目的で動物を取り扱う者は、取り扱う行為ごとに登録を受けなければならない。

登録が必要なケースの例:

活動内容必要な登録区分
老人ホーム・病院へのドッグセラピー訪問(有償)貸出業(+展示業に該当することも)
イベントで犬を一般客に触れさせる展示業
映像出演や宣伝活動に使用する貸出業+展示業(場合による)

コンプライアンス上のリスク(訓練所・依頼者双方)

▼ 訓練所側のリスク

  • 登録外業務により行政処分(業務停止・登録取消)や罰則の対象になる可能性

  • 問題が発覚した場合、犬の福祉配慮不足として社会的批判を受けることも

▼ 依頼元(老人ホーム・病院・イベント主催企業)のリスク

  • 無登録事業者との契約や協力により、コンプライアンス違反が問われる

  • イベント中の事故やクレームで、監督責任・安全配慮義務違反のリスクが発生


✅ 施設・依頼先が取るべき対応

項目推奨対応
訓練所側「貸出業」「展示業」への登録追加、活動内容の明文化と告知
依頼企業・施設登録状況の確認、契約書における「登録番号・責任範囲」明記
両者共通犬の健康・性格適性確認、現場でのストレス管理、時間制限などのガイドライン整備

善意の活動も、法と命に基づいて

慰問活動やイベント出演は、犬たちの活躍の場であり、人との温かなつながりを生む大切な活動です。
ですがその一方で、命を預かる活動だからこそ「善意」だけでは済まされない法的な責任と配慮が求められます。

動物に関わる“すべての行為”は、その命に対する責任を伴う。
それが、現代の動物福祉の根底にある考え方です。

登録は「ただの書類手続き」ではなく、
動物の命と使う人間側の責任を明確にする仕組みです。

「法律を守ること」が、結果として犬たちを守り、あなたの施設や団体の信頼を守ることにもつながります。

動物を“使う”側が守るべき ― リスクを避けるための3つの基本原則

営利目的で動物を使用する場合、“登録”が必要かどうかを必ず確認すること

  • 飼い主が個人で動物を撮影に使ったり、訓練所が犬を外部へ派遣したり、SNSで動物を“仕事として活用する”際は、
     「第一種動物取扱業」の登録区分(貸出・展示・販売など)に該当するかの確認が必要です。

  • 「無償だからOK」「うちの子だから関係ない」と思いがちですが、営利目的であれば登録義務が発生するケースがほとんどです。


“誰が責任を負うのか”を曖昧にしないこと

  • 撮影現場・慰問先・イベント会場など、動物が人前に出る場面にはリスクと責任が必ずつきまといます。

  • プロダクションや訓練所が責任を持って管理・監督できているか、依頼する側も**「その動物は適正に管理されているか」を確認する義務**があります。


動物を“演出や収益の手段”としてではなく、“命ある存在”として扱う意識を常に持つこと

  • SNSの可愛い投稿、撮影への起用、セラピー活動やイベント参加――
     それがいくら好意的な目的であっても、動物が過度に疲れていないか、危険にさらされていないかに目を向ける姿勢が不可欠です。

  • 映える瞬間より、守る配慮を優先することが、動物との関係に本当の信頼をもたらします。


動物の“ちから”を借りるなら、同じだけの責任を持とう

動物は、癒しを与え、魅力を届け、人の心を動かす“力”を持っています。
でもその力を「借りる」以上、私たちにはその命に対する責任配慮を持つ義務があります。

「たまたま」「一回だけ」「無償だから」――
そうした言い訳が通用しないのが、今の時代の動物福祉と社会の目です。

法律を守ることは義務であり、
命を守ることは信頼の礎です。

その動物が、誰に連れ出され、どんな目的で使われ、どんな場所で待たされているのか――
すべてにきちんと向き合える体制と心構えが、
私たち人間に問われているのです。