
法改正で“登録制”が終わる。動物取扱業者に求められる、新しいスタンダードとは?
許可制への移行で何が変わる?──動物取扱業者が今準備すべきこと
2025年の動物愛護法改正により、動物取扱業の「登録制」から「許可制」への移行が予定されています。これは、ペットショップ、ブリーダー、動物プロダクション、展示施設など、動物を取り扱うすべての事業者にとって、大きな転換点となる改正です。
これまで比較的手軽に取得できていた登録制度に比べ、許可制度では行政による審査や監査が厳格化され、施設基準や運営体制に対する法的責任も重くなります。本記事では、今後の制度変更に備えて「何を準備すべきか」「どこが変わるのか」を、現行制度との比較を交えながらわかりやすく解説します。
登録制と許可制の違いとは?
制度 | 登録制(現行) | 許可制(改正後) |
---|---|---|
管理体制 | 申請書類と実地確認 | 申請+厳格な事前審査と定期監査 |
適格性 | 基本的に誰でも登録可 | 法人・個人の法令遵守歴・資質審査あり |
更新頻度 | 5年に一度 | 原則3年以内ごとに審査予定(案) |
罰則・取消 | 行政指導で済むことが多い | 許可取り消し・営業停止命令の明文化 |
【1】求められる主な書類と申請手続き
許可制移行後、申請時には以下のような書類の提出が義務化される予定です:
法人・個人情報(登記簿謄本、住民票、履歴書など)
動物取扱責任者の資格証明(研修修了証、実務経験証明)
施設の平面図および写真
動物の飼育・展示・販売計画書
獣医師との連携契約書(または嘱託契約書)
過去の行政処分・法令違反の有無に関する誓約書
※内容や様式は環境省からの省令で今後確定される見込みです。
【2】施設基準の厳格化
2021年の改正法ですでに「飼育スペースの広さ」や「温湿度管理」「給餌・給水の頻度」などが細かく数値化されましたが、今後はこれに加えて:
防音・防臭対策の構造化
自然光や採光の確保
緊急避難・隔離スペースの設置
鳥類や爬虫類など種別に応じた区画管理
といった基準が、より明文化・義務化される可能性があります。これにより、狭小スペースや簡易設備の施設は更新が難しくなることが予想されます。
【3】動物取扱責任者の研修義務と実務要件
新たな許可制では、動物取扱責任者に対して「定期的な研修受講義務」が課される方向で調整が進んでいます。これまで一度研修を受ければ終わりだった制度から、以下のような継続的教育制度が導入される見込みです:
初回:基礎研修(法令、動物福祉、衛生管理)
継続:年1回以上のフォローアップ研修
専門職対応:獣医師・飼養員・ハンドラー等は職種別研修の可能性あり
また、「半年以上の実務経験」が求められることに加え、名義貸しを防止するための実質的な常勤性の確認も厳しくなる見通しです。
【4】違反時のリスクも明確化
許可制に移行することで、違反に対する処分も明確化・重罰化されます。具体的には:
不適正飼養:営業停止命令や許可取消の対象に
名義貸しや研修不履行:罰則対象(行政処分+刑事罰)
虚偽申請:即時不許可+5年間の再申請禁止措置
これらは動物愛護法第12条、第19条の改正によって明文化される予定で、違反時の事業継続が極めて困難になります。
【5】新規参入者への影響と準備ポイント
新たに動物取扱業へ参入しようと考えている方にとっても、許可制の導入は大きなハードルとなる可能性があります。以下の点に特に注意が必要です:
資金計画:施設改修や基準充足のための初期コスト
獣医師・スタッフとの契約体制の構築
実務経験の確保と記録化(半年以上の実地経験証明)
地域自治体への事前相談と設備基準の確認
おわりに:求められるのは“命を預かる覚悟”
許可制への移行は、「法的にクリーンな業者だけが残る」時代の到来を意味します。それは同時に、“命を預かる者としての覚悟”が求められる時代でもあります。
すでに事業を行っている方も、これから始めようとしている方も、今一度「動物福祉の原点」に立ち返り、制度に先んじた対応を進めていくことが、持続可能で信頼される業者となる第一歩です。
