
助かった命は、それで終わりではない。
野生に戻れない動物を、生かし続けることは本当に正解なのか。
終生飼養という選択の裏側にある、
優しさだけでは語れない現実と覚悟を見つめ直す。
野生復帰できない命を「生かし続ける」ことは正解なのか
― 動物福祉と終生飼養の現実
はじめに|この記事の立場について(重要)
※本記事は、筆者自身が獣医療行為を行っている立場からの記述ではありません。
筆者は獣医師免許を有しておらず、診断・治療・処置などの医療行為は、必ず獣医師によって判断・実施されるべきものです。
本文で扱う内容は、野生動物医療・保護・飼養の現場において、獣医師や関係者のあいだで長年議論されてきた考え方をもとに、
「生かし続ける」という選択の意味を整理した思想的な読み物です。
本記事は、正解を示すことを目的とするものではありません。
判断の背景にある視点を共有し、読み手自身が考えるための材料を提供することを目的としています。
「助かった命」の、その先はあまり語られない
野生動物の保護活動や医療の話題では、
しばしば「助かった瞬間」が注目されます。
保護された
治療が成功した
命がつながった
しかし、本当に難しいのは、
そのあとです。
野生に戻れない
障害が残る
自力で生きられない
その命を、
私たちはどう扱うのか。
終生飼養という選択肢
野生復帰が不可能な場合、
しばしば提示されるのが
終生飼養という選択です。
「生きているのだから」
「殺すよりはいい」
そう考えるのは、自然なことです。
しかし、終生飼養は
常に動物福祉的な正解とは限りません。
生きていることと、生きられていることは違う
野生動物にとって重要なのは、
心臓が動いているか
呼吸しているか
だけではありません。
自由に動けるか
強いストレスの中にいないか
本来の行動を発揮できているか
これらが成立して、はじめて
「生きられている」と言えます。
ただ命をつないでいる状態を、
本当に「生かしている」と呼べるのか。
この問いは避けられません。
人為管理は、必ず負担になる
終生飼養では、
人の管理
人の判断
人の都合
が、必ず介在します。
どれだけ丁寧に環境を整えても、
野生での生活を完全に再現することはできません。
これは、善意の問題ではなく、
構造の問題です。
生かし続けることで、失われるもの
長期飼養の中で、
動物が失っていくものがあります。
野性
自律性
自分で選ぶ自由
それらは、
目に見えにくく、
数値化もできません。
しかし確かに、
失われていきます。
「死なせないこと」が目的になっていないか
善意は、ときに目的をすり替えます。
生かすことが正義
死なせないことが善
になると、
苦痛
閉塞
ストレス
が見えなくなります。
その結果、
命を守るつもりで、命を縛ってしまう
という矛盾が生まれます。
終生飼養は「やさしい選択」ではない
終生飼養は、
場所
人手
経済的負担
時間
を、長期間拘束します。
そして何より、
その命の「人生すべて」に責任を持つ
という覚悟が必要です。
これは、
感情だけで引き受けられる選択ではありません。
正解は、ひとつではない
ここで、はっきりさせておく必要があります。
終生飼養が最善な場合
安楽な看取りが福祉的な場合
介入しないことが穏やかな場合
どれも、条件次第で成立します。
重要なのは、
一律の正解を求めないことです。
判断とは、命の「その後」を引き受けること
野生復帰できない命を前にしたとき、
問われているのは、
「生かすか、殺すか」
ではありません。
「その命の時間を、誰が、どう引き受けるのか」
という問いです。
これは、
とても重い判断です。
最後に|「生かす」とは、どういうことか
生かすとは、
命を引き延ばすことではない。
その命が成立する場所を、引き受けることだ。
終生飼養を選ぶなら、
その重さごと引き受ける必要があります。
選ばないなら、
その判断の責任を引き受ける必要があります。
まとめ|終生飼養は「優しさ」ではなく「責任」
生かすことは、善そのものではない
しかし、見捨てることでもない
判断には、覚悟が必要
この現実を直視したとき、
はじめて私たちは、
「かわいそう」という感情
「何もしない」という判断
を、同じ地平で理解できるようになります。
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